霞ヶ浦再生に向けた人々の夢を踏みにじる国交省と研究者

NPO法人アサザ基金 代表理事 飯島 博

■小学生や市民が長年取り組んできた自然再生地区が破壊されました。
 全国の自然再生事業の先駆けとして、霞ヶ浦で2000年度に国土交通省やNPO、住民、研究者等が協働で自然再生事業(湖岸植生緊急対策事業)を実施しました。事業実施後に時間を経て確実に失われていた自然が回復してきましたが、今年6月にとんでもない事態が生じました。自然再生事業が実施された霞ヶ浦南岸にある境島地区内で突然工事が行われ、オオヨシキリやヨシゴイなどの野鳥が営巣し、アオヤンマなどの昆虫類が生息するヨシ原(再生)が重機で破壊され鉄板の下敷きになり、メダカの群れが見られたワンドが仕切られポンプによる強制排水によって干し上げられてしまったのです(写真)。住民に一切の情報はありませんでした。

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 この事態に驚き、工事の発注者である霞ヶ浦河川事務所に説明を求めたところ、「生物多様性保全の観点から委員会の研究者の意見を聞きながら同地区内で実験を行っている」ということでした。こちらから、工事を実施している区域には、絶滅危惧種を含む多くの生物が生息し、繁殖中の種もあることを指摘すると、事務所からは「事前にそれらの生物への影響は考えていなかった。調査もしていない」という返事がありました。さらに、この地区では延べ数千人の小学生や地元住民が関わって、ヨシ原等の復元に取り組んできたことを指摘したところ、「その件についても事前に配慮をしなかった」という返事でした。この地区では、現在も、市民モニタリングや学校の環境学習、ボランティアによるアサザなどの再生活動が継続されています。自然再生推進法の成立当時そのモデルとされた同事業地区での国交省と研究者による破壊行為は、多くの問題を浮き彫りにするものだと思います。
(ラムネットJニュースレターVol.2より転載)

2009年10月21日掲載