韓国4大河川事業について日韓市民視察団が声明を発表

 2010年7月8日〜11日、ラムサール・ネットワーク日本と韓国の湿地NGOが共同で行った、韓国4大河川整備事業の第2回目の視察において、日韓市民視察団は以下の声明を発表しました。



第2次日韓市民視察団 共同声明文

 ラムサール・ネットワーク日本と韓国湿地NGOネットワークをはじめとした多くの団体と個人は、2010年2月27日から3月1日まで行った「4大河川事業日韓市民視察団」の継続として2010年7月9、10日の2日間「第2次4大河川事業日韓市民視察団」を行った。今回の「第2次日韓市民視察団」では韓国のイ・ミョンバク政府が推し進めている4大河川事業の核心的な事業地域であるナクトンガンを中心に調査活動を行った。

 1、2回の視察と討論を通して確認された事実をもとにして両国のNGOは現在韓国政府が推進している4大河川事業に対して深刻な憂慮を表明し、同時に以下の主張を共同声明として発表する。

現在、進行中の韓国政府の4大河川事業は明確な環境破壊事業である
 日韓両国のNGOはナクトンガン事業が行われているナクトンガンのほぼ全ての地域を訪問した。そして、ハンガンをはじめとした他の4大河川事業も、やはりナクトンガン事業と同じようなものだと把握している。今回、訪問したナクトンガン事業地域の大部分で大規模な浚渫が行われており、川水の流れを塞ぐ巨大なダム工事が行われていることも確認できた。水辺の大部分の植生帯は荒廃し、大部分の砂浜が浚渫で壊された。水辺の植生帯と砂浜はナクトンガンの自然を維持するもっとも重要な要素であることを考えたとき、現在進行中のナクトンガン事業は生命を破壊する事業であり、深刻な環境破壊であることを確認した。

4大河川事業は目的が明らかでない事業である
 日韓両国の視察団は、サンジュ堰、ダルソン堰、ハムチョン堰、ハムアン堰などナクトンガンに設置されるほとんどのダムの現場を訪問した。それぞれのダムには可動式の水門もあるが、川幅の大部分はコンクリートの構造物で塞がれている。ダムの柱部分と川を塞いでいる構造物は川の流れを遮断する役割をし、韓国政府が進めている4大河川事業の中心的な目標である洪水対策とは対立する事業であることが明らかになった。京都大学の今本名誉教授は「第2次日韓市民視察団」の討論会で日本の事例と現在の河川事業についての発表を行い、韓国政府の4大河川事業が現代的な概念の洪水予防対策に逆行している事業であることを明らかにした。そして、現場の調査活動を通して日韓両国の視察団は今本教授の主張を確認できた。

4大河川事業はラムサール条約と生物多様性条約に違反する事業である
 「第2次日韓市民視察団」は、韓国政府によって破壊されている国際的な絶滅危惧種と各種の動・植物の棲息地と中間期着地の問題に対して深い憂慮の念を表明する。日韓両国の市民視察団は、ナクトンガン事業により破壊されるヘピョン湿地、ナムジ、ボンポ湿地、ナクトンガン河口など国際的な絶滅危惧種の棲息地と中間期着地に対し特別な関心を抱いている。両国の市民視察団は、韓国政府が国際的に絶滅危惧種と移動性水鳥、そして各種の動・植物に関連する条約に加入しているという点を、特に強調したい。また、ラムサール条約締約国会議の開催国として、これを遵守する国際的な義務の履行についても要求したい。あわせて、イ・ミョンバク大統領がラムサールCOP10の開幕式の演説で明らかにした「ラムサール条約の模範的な国家になる」という宣言の誠実な履行も希望する。

 「第2次日韓市民視察団」は今後、展開される韓国の4大河川事業に対していっそう強い関心を持つだろう。そしてこのような持続的な関心の延長線上に、2010年10月に日本の名古屋で開催される生物多様性条約締約国会議にむけて準備をしようと思う。私たちは汎地球的な次元で環境問題に接近しようと思い、そのような認識の転換点から韓国の4大河川事業を見守っている。
 「第2次日韓市民視察団」の参加者は大韓民国のイ・ミョンバク政権が推進している4大河川事業の中断を促し、治水、利水をふくむあらゆる事業が原点から再検討されることを強く希望する。

  2010年7月10日
第2次日韓市民視察団 参加者一同

2010年07月23日掲載