環境省が172か所の条約湿地潜在候補地を選定!

2012年春の登録をめざして絞り込み作業本格化へ

ラムネットJ事務局長 浅野正富

■172か所がラムサール潜在候補地に
潜在候補地の位置図

潜在候補地の位置図(環境省資料より作成)

※本図は模式図であり必ずしも実際の潜在候補地の位置を反映していない

 2007年11月に策定された第3次生物多様性国家戦略は、2012年のラムサールCOP11までにラムサール条約湿地を10か所追加登録する目標を揚げていましたが、2008年のCOP10で4か所が登録されましたので、2012年のCOP11までに6か所が登録されることになります。2010年3月に策定された生物多様性国家戦略2010もこの目標を再掲しました。
 昨年9月30日には環境省から、国際基準を満たす湿地をリストアップし、172か所の潜在候補地を選定したことが公表されました。環境省は2004年にも54か所の条約湿地の候補地を選定していますので、その時と比べ今回の選定は3倍以上の数になります。
 但し、2004年の際には、環境省が日本の場合の条約湿地登録の条件としている、(1)国際基準に該当すること、(2)保全の法的担保として鳥獣保護区等の保護区(環境省所管の自然保護に関する法律による保護区に限られています)に指定されていること、(3)地元の賛意があることの3条件のうち、(1)と(2)に該当するもの((2)については保護区指定の予定も含みました)を候補地として選定したのに対し、今回は(1)のみに該当する湿地を選定しましたので、呼び名も候補地ではなく、潜在候補地になりました。

■河川法による登録の道は開かれるか
 今後172か所の潜在候補地から、2012年春に開催を予定されているCOP11での登録をめざして、(2)と(3)の条件を満たす湿地を最低6か所絞り込む作業が本格化します。しかし、(2)については、環境省所管の自然保護に関する法律の保護区指定がされなければ保全の法的担保があるとは言えないのか、それとも、例えば河川法により国土交通省が河川区域として管理しているだけでも保全の法的担保ありとする余地はないのかということを、私たちNGOが以前から指摘していました。そのような中、昨年春に国土交通省が河川法を保全の法的担保とできないか環境省に協議を申し入れて現在協議が続けられていますので、近いうちに(2)の条件について見直しが行われる可能性があります。国内の河川については、今まで、湿原と一体として、あるいは渓流として登録されたことはあるものの、河川自体として条約湿地に登録された例はありません。河川法が保全の法的担保となる道が開かれれば、将来的には、全国で多数の河川が条約湿地に登録されることが期待されます。
 また、2010年5月にはラムネットJから環境省に対し、従来、候補地に選定されていなかった16か所の湿地を候補地に推薦していましたが、そのうち松川浦、霞ヶ浦、渡良瀬遊水地、汐川干潟、六条潟、矢並湿地、中池見湿地、吉野川河口、円山川下流域、曽根干潟、泡瀬干潟の11か所が潜在候補地になりました。これら11か所や従来から候補地となっている三番瀬や和白干潟などの重要湿地の登録が実現されるかについても、大いに注目していきたいと思います。

(ラムネットJニュースレターVol.5より転載)

2011年04月22日掲載