泡瀬干潟は、世界の宝。何としても守りたい。

泡瀬干潟を守る連絡会・事務局長/ラムネットJ理事 前川盛治

■生物多様性の宝庫・泡瀬干潟
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 沖縄県の泡瀬干潟は、昨年9月に、環境省がラムサール条約登録の潜在候補地に選定しました。絶滅危惧ⅠA類のクロツラヘラサギが飛来、トカゲハゼ、クビレミドロ等が生息する、南西諸島を代表する干潟である、等がその理由です。泡瀬干潟は、まさに「世界の宝」です。
 しかし、生物多様性の宝庫である、この泡瀬干潟・浅海域を埋め立てる事業が2000年に認可されています。埋め立て理由は、「隣接する、うるま市新港地区東埠頭の整備で発生する浚渫土砂の処分場にする(国の目的)」、「完成した埋め立て地を沖縄市・県がリゾート地として利用する(沖縄市・県の目的)」でした。2001年に「海草の機械移植実験」が始まり、2002年3月に工事が着手されてしまいました。

■泡瀬干潟を守るための取り組み
 このような中で、2001年1月に「泡瀬干潟を守る連絡会」が結成され、以後さまざまな取り組みをしてきました。
 最初に取り組んだのは「住民投票条例制定運動」です。2001年6月・12月沖縄市議会に提出しましたが、否決されました。しかし私たちは諦めず、泡瀬干潟の貴重さを知らせる運動を強めるともに、泡瀬干潟・浅海域の調査活動、事業者が埋め立ての代償措置として実施している「大型海草の移植」の検証も取り組みました。
 大型海草の移植については、私たちの調査で「失敗」であることが明かになりました。また、埋め立て地には被度50%以上のサンゴ礁があり、周辺には大きな面積でヒメマツミドリイシ群落があることも明かになり、事業者も再調査した結果、そのことを認めました。専門家との連携の下、ホソウミヒルモ、ニライカナイゴウナなどの新種、ジャングサマテガイなどの貴重種の発見・記者会見での発表も相次ぎました。しかし、埋め立て工事をストップさせることはできませんでした。

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上空500mから見た泡瀬干潟埋め立て工事の現場。(2008年5月8日)

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東門美津子市長に抗議する連絡会のメンバー。(2010年8月4日、右端が筆者)


■地裁、高裁が差し止め判決
 そこで取り組んだのが「住民監査請求・訴訟」です。2005年5月に提訴しました。大きな争点は、実施されたアセスの不十分さ、埋め立ての経済的合理性のなさの2つです。8名の専門家の意見書提出・証人尋問などの17回の公判を経て、2008年11月19日に那覇地裁で「埋め立てに経済的合理性はない、県・市は埋め立てに公金を支出するな」との判決が言い渡されました。私たちの勝訴でした。
 県・市は控訴し、2009年10月15日、福岡高裁那覇支部で判決が言い渡されました。高裁判決は地裁と同様でしたが、「事業計画の見直しのための調査及び人件費などは違法ではない」との判決もありました。でも実質的には、再び私たちが勝訴しました。
埋め立て工事再開の動き
 これで、「埋め立ては中止」と私たちは喜んでいましたが、「見直しのための費用などは違法ではない」という判決を理由に、沖縄市は新たな土地利用計画案を2010年7月30日に発表し、それを国に提出しました。国は、これまでの「無駄な公共事業は中止する」との公約をかなぐり捨て、わずか4日後の8月3日に、沖縄市案を認め、泡瀬埋め立て工事の再開を表明しました。驚くべき事態の急変でした。
 今、国・県は沖縄市案に基づき埋め立ての一部変更の手続きを始め、4月26日に書類を提出し、8月頃の工事再開をもくろんでいます。しかし、変更手続きは、今度の東日本大震災の津波・液状化を教訓にせず、大震災前の沖縄市の計画をそのまま進めるものです。そのことについて地元のマスコミも「経済的合理性もない、また大震災の教訓も生かさない、工事着工ありきの出来レースだ、もっと議論すべきだ」などと批判しています。
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泡瀬干潟を展望できるカフェ「ウミエラ館」が4月に開館。館長は連絡会・事務局次長の屋良朝敏さん。

 私たちは、この蛮行をやめさせるため、新たな住民監査請求と住民訴訟(8月頃提訴)を取り組んでいるところです。全国の仲間のご支援をお願いいたします。
(ラムネットJニュースレターVol.6より転載)

2011年07月28日掲載