湿地巡り:蕪栗沼・周辺水田(宮城県)

蕪栗ぬまっこくらぶ 戸島 潤

 蕪栗沼は、宮城県の仙台市から北へ約40 kmにあります。沼のある一帯は仙台平野もしくは仙北平野と呼ばれている広大な水田地帯で、蕪栗沼はさながら水田のなかに浮かぶ緑の島のようです。
 蕪栗沼はもともと北上川の流水が氾濫したときに水が貯まる自然遊水池でした。平成13年、国の事業により周辺3つの水田区画と合わせ蕪栗沼遊水地が整備されました。増水時には蕪栗沼からあふれた水が周辺の水田に流れ込み、田畑や家屋を洪水から守っています。
 仙台平野には伊豆沼・内沼、化女沼、蕪栗沼・周辺水田の3つのラムサール条約湿地があり、日本に飛来するガン類の実に9割がこの地域で越冬します。蕪栗沼では平均で約7万羽のマガンが沼で越冬します。
 ガン類の多くは、沼をねぐらとし、日中を周辺の水田で過ごします。朝の飛び立ちや夕方のねぐら入りの光景は絶景で、毎年何万人もの人が沼を訪れます。一方で、ガン類は水田の落ち穂や大豆、麦の新芽などを食べており、ときに食害を引き起こします。

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ねぐら入り観察会

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 蕪栗沼の保全を考える上では、豊かな自然環境を保全するとともに、治水や農業との共存を図ることが必要です。蕪栗沼では農業者、地域住民、NPO、行政関係者からなる蕪栗沼管理会やマガンの里づくり研究会が開催されています。
その結果、陸地化防止のための浚渫や、ヤナギやヨシの刈り取りなど沼の管理を、環境に影響がないようモニタリング調査を行いながら実施しています。また渡り鳥を安心安全のシンボルとして使った米の販売や、環境に配慮した農法の普及が行われるようになりました。
 このように関係者一同が真摯に話し合いを続け、お互いを支え合う関係を築けた要因は、自然環境と調和した社会をつくることが、地域の発展につながるという共通認識と、情報の共有があったからだと思います。蕪栗ぬまっこくらぶでは毎月発行される『蕪栗沼通信』やホームページを通じて、沼の将来像と現在の課題を常にアピールしています。
(ラムネットJニュースレターVol.7より転載)

2011年11月22日掲載