泡瀬干潟埋め立て再開と泡瀬(沖縄)のサンゴ群集の現状

日本自然保護協会 保護プロジェクト部 安部真理子 

■ずさんな環境影響調査
 生物多様性豊かな泡瀬干潟に埋め立ての護岸を作るに当たって、環境調査は最初からきちんと行われていませんでした。サンゴ類の調査に限っても、豊富にあるとされていた場所にはサンゴがほとんどおらず、一方でサンゴはほとんどいないとされていた場所に豊富に生息していました。そこは現在護岸で囲まれ、土砂が投入されている場所(第1区域)です。
 環境影響評価のプロセスが全て終わり、着工後に研究者や市民団体などの調査により多くの魚類や貝類、甲殻類などが発見されました。中には、11種の新種と128種の絶滅危惧種も含まれていますが、いったん開始された工事は止まりません。

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リュウキュウキッカサンゴ 撮影:小橋川共男氏(2005年)

■素晴らしいサンゴ群集
 初めて泡瀬干潟のサンゴ群集を見たのは2005年のことでした。国内外でさまざまなサンゴ群集を見てきましたが、泡瀬の第1区海域に生息していたような大きく美しく広がるリュウキュウキッカサンゴ群集は、他の場所では見たことがありません。またオヤユビミドリイシやスギノキミドリイシの群集も見られ、その中間タイプではないかと思われるサンゴも多々見られました。これらのサンゴ群集は、今は護岸に囲まれ土砂を投入されてしまったのでもう見られないのが残念です。
 泡瀬干潟のサンゴ調査は上述の護岸で囲まれた場所と、護岸から2kmほど離れた西防波堤の2か所で行ってきました。西防波堤には、第1区域とはまた異なる美しさをもつ枝状のヒメマツミドリイシ(サンゴ)が優占する海が広大に広がっています。ヒメマツミドリイシは海草と共生しています。また2007と2008年の夏にはサンゴの産卵の光景を見ることができました。産卵シーンには調査員一同、息を呑んで見入ったことを昨日のように覚えています。


泡瀬干潟のサンゴ(ヒメマツミドリイシ群集)の変化(埋め立て区域外)


ヒメマツミドリイシ(サンゴ)の産卵
写真提供:泡瀬干潟を守る連絡会


■減少する泡瀬のサンゴ
 しかしながら調査結果が示すように、サンゴの被度(海底をサンゴが覆っている割合)は2010年までは年々減ってきています。2011年にサンゴの割合が若干上がっていますが、裁判の結果、公金差し止め処分を受け、1年間ほど工事が中止されていたため、その間に水質が良くなり少し回復したものと思われます。また今は工事が再開されているので土砂の影響で水質が悪くなっていることは明白で、サンゴは減り始めていることと思われます。
 日本自然保護協会は地元の人達と協力し、埋め立て地の周辺海域で海草やサンゴ群集、地形の調査を行っていますが、年々状況は厳しくなってきています。早く工事が中止され、自然再生の方向に向かうよう、ご支援をお願いします。

ラムネットJニュースレターVol.8より転載)

2012年02月29日掲載