霞ヶ浦の放射能汚染について

NPO法人アサザ基金代表理事 飯島 博

 福島第一原発の爆発によって大気中に放出された放射性物質は、霞ヶ浦流域の広範囲にに降り注ぎ、現在雨水などによって徐々に56本の流入河川に集まり、霞ヶ浦に向かって移動している。一部の流入河川からは極めて高い数値の放射性物質が検出され、このまま放置すれば確実に湖が汚染されることが予測される中で、行政は具体的な対策を講じようとしないばかりか実態の把握さえ真剣に行っていない(環境省が56河川の内の24河川、各河川1ヶ所でのみ調査を実施)。そこで、わたしたちは独自に流入河川での汚染状況を把握し、除染の必要性を明らかにして、行政に除染の実施を求めていく取り組みを始めた。市民による放射能モニタリングは、全流入河川56本での調査を実施し、すでに150か所以上でサンプリング調査を行っている。全体として福島県内の河川よりも霞ヶ浦の流入河川の方が高い値の放射性物質を検出しているが、行政による対策は実施されていない。
 霞ヶ浦の放射能汚染をさらに深刻化させているのが、湖を管理する国土交通省による常陸川水門(逆水門)の閉鎖である。逆水門の閉鎖によって、湖の閉鎖性がさらに強くなり、河川を通して流入した放射性物質が湖底に沈殿しやすくなる。また、湖の水位を高くして管理することで、湖岸のヨシ原が水没し、波によって運ばれてきた放射性物質がヨシ原に蓄積しやすくなるなどの問題が生じている。これらの問題の指摘を受けても、国交省は一向に管理の見直しを行おうとはしない。このままでは、霞ヶ浦は巨大な放射能溜めにされてしまう恐れがある。
 アサザ基金は、流域の34の大学、研究機関に協働の取り組みを呼びかけているが、まだ呼びかけに応える機関は無い。霞ヶ浦は野生生物の貴重な生息地であり、同時に水道水や農業用水、工業用水の水源であり、漁業も盛んに行われている。霞ヶ浦に放射性物質が集積し汚染が長期に及べば、その影響は計り知れない。なんとしても、汚染を未然に防ぐ必要がある。そのために、アサザ基金は独自のモニタリングを実施すると共に、流入河川からの放射性物質の湖への流入を阻止するための対策の実施を、行政や研究機関との協働によって実現するため粘り強く取り組んでいる。

※この記事は、ラムサールCOP11向けて発行した「ラムネットJニュースレター」号外(英語版)に掲載した記事の日本語の元原稿です。

2012年07月08日掲載