清流の里を脅かす石木ダム

川原人会(こばるとかい) 石丸 勇

■問題だらけの石木ダム建設計画
 石木ダムは、長崎県と佐世保市が川棚川の支流、石木川中流域の川原地区に計画した佐世保市の水源確保が主目的の多目的ダムです。計画ではダムの堤高55.4m、長さ234m、総貯水量548万t、総事業費285億円で、補助率アップのために治水等が付け加えられたといいます。1972年、県が予備調査を開始。75年に国が事業採択。82年、土地収用法に基づき県が機動隊を導入し強制測量調査をしたために、反対同盟や支援者等による阻止行動が行われました。09年11月、県と佐世保市が強制収用を可能にする事業認定を国に申請しました。13年3月に国交省九州地方整備局は事業認定手続きを再開し、公聴会が開催されました。現在、事業認定手続きの動向を待っている段階です。
 13年3月に実施された佐世保市の水道事業再評価は、「石木ダムありき」で数字合わせによるごまかしの水需要予測を行いました。実際、佐世保市の水は足りています。過去の渇水騒ぎも、石木ダム建設推進のために漏水対策やダム以外の水源対策を怠った結果だったことが、最近分かってきました。
 県は石木ダムで水害を防ぐと宣伝しますが、石木ダムの流域面積は川棚川全体の9分の1しかなく、治水に役立ちません。川棚川下流域の水害は、内水被害によるものだからです。
 また、環境アセスは、閉鎖性海域の大村湾への影響に関し調査をしていないという、まったく杜撰なものです。

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九州のマッターホルン虚空蔵山
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強制測量調査阻止行動(1982年5月21日)

■里山の豊かな自然を守るために
 建設予定地は、大村湾岸から5km弱の地、車で約5分のところです。どこにでもありそうな里山を抱く、自然豊かな清流の里です。ホタルやカワセミ、カスミサンショウウオなども生息しています。九州のマッターホルンと呼ばれる虚空蔵山を源とする石木川の上流には、日本の棚田百選の地「日向の棚田」もあります。
 水没予定地区に暮らす13戸の地権者は、計画が持ち上がって以来半世紀の間、ダム建設に一貫して絶対反対の姿勢を貫いています。ふるさとを守る闘いは、必然的に里山の自然を守り後世へ伝えていく運動と結びついて、そこで暮らす人々を生き生きと輝かせています。「小さなダムの大きな闘い」として、全国に発信された故山下弘文さんも認めた原点です。
 湿地のグリーンウェイブに参加している「川原ほたる祭り」は、第26回の今年も盛会でした。この時季は、幻想的なホタルの乱舞を求めて多くの人が訪れます。

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石木川に生息する魚たち(石木ダム反対パンフから)
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今年の川原ほたる祭り(2013年5月25日)
ラムネットJニュースレターVol.13より転載)

2013年10月12日掲載