中津干潟と中津の水辺環境の保全のために

──水辺に遊ぶ会近況報告
NPO法人水辺に遊ぶ会理事長 足利由紀子

●舞手川事件その後
 日頃、お気楽お楽しみ行事ばかりが話題に上る水辺に遊ぶ会ですが、昨年10月、「カブトガニの生息地に重機」というショッキングな見出しで新聞各紙に記事が掲載され、全国の皆さんに大変ご心配をおかけしました。湿地保全と高潮対策(護岸設置)という相反する問題を解決した「セットバック護岸」で有名になった舞手川河口は、水辺に遊ぶ会の活動のシンボルであり、研究者や行政の方々とともに長い時間注力してきた場所です。ここに台風ごみの撤去のため、大型の重機が入り、カブトガニが産卵する砂浜や背後地の植生が壊されるという問題が生じました。幸い工事初日に気がついたため、影響は最小限で抑えることができましたが、殺伐とした風景はもちろん、それまで築いてきた行政との信頼関係の中でこのような問題が起きたということが、私たちにとって大きな衝撃でした。「言わなくてもわかっているだろう」。日頃の忙しさにかまけて、基本的な考え方の確認や相互理解を怠ったことの現れと、皆で反省しました。現場に残されたごみや台風漂着ごみは行政関係者と市民ボランティアで撤去、養浜作業も速やかに行っていただきました。これを機に、一帯の浸食問題にも取り組もうという流れになり、現在は行政の皆さんとともに、舞手川河口を含む沿岸域の環境修復について検討しているところです。

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舞手川河口。奥に見えるのがセットバック護岸
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トンボ池の作業を地元の方と

●地域の中で活動するということ
 先のごみ撤去は漁業者の要望によるものでした。このため、一部漁業者から「自然保護団体とはやはり一緒にはできない」と言われてしまいました。もちろん、10年にわたり、ともに漁業体験を行ってきた漁業者との信頼関係は変わりませんが、「環境も大事」という私たちの思いを、多くの関係者に理解していただくための努力がまだまだだったと痛感しているところです。
 平成26年度は荒廃した海岸の松林の整備作業やベッコウトンボの生息するため池の環境整備のお手伝いも、ボランティアを募って開始しました。どこの活動でも感じることは、地元の方々との関係の構築の難しさです。私たちは彼らにとってみれば"うさんくさい余所者"。何度も話し合いを重ね、理解していただいた上で、初めて保全活動が成り立つのだと感じています。

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この冬はこんな鳥たちがやってきました
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カブトガニ

●課題はいっぱい
 活動開始から16年になった水辺に遊ぶ会。おかげさまで活動の輪が広がり、多くの評価もいただいていますが、中心メンバーも16歳年をとり、会報の「ガタガタ通信」ならぬ「足腰ガタガタ」状態です(笑)。初心に返り、足下の活動の見直しと地域との繋がりを強くしたいと思っています。また、次の世代を育てるという急務もあります。ビンボーを返上すべく活動資金を生む仕組みも考えはじめました。そして、中津干潟にネイチャーセンター設置という無謀野望実現のため、ガタガタな足腰にむち打って、これからも頑張りますので、応援よろしくお願いします。 


2015年05月30日掲載