報告:第11回日韓NGO湿地フォーラム・国際湿地NGOワークショップ

ラムネットJ共同代表 柏木 実

 2016年10月29〜30日、ラムネットJは岐阜市で「第11回日韓NGO湿地フォーラム・国際NGOワークショップ」を開催しました。ラムネットJ、韓国湿地NGOネットワーク(KWNN)、世界各地の湿地で活動する草の根NGOのネットワークである世界湿地ネットワーク(WWN)で、国際条約、特にラムサール条約と地域NGOの関係について考え合いました。2日間の参加者は延べおよそ90人でした。ラムサール条約事務局からアジア・オセアニア地域上席担当官ルー・ヤンさんを招き、KWNNから2つの全国環境NGO団体と地域湿地団体の計5人、WWNから新・前議長を含む各大陸代表3人と、ラムネットJなど日本の地域NGO、湿地の現場で活動する個人・団体のメンバーが参加しました。
 ラムサール条約の1993年釧路会議を契機に日本の湿地政策が前進した一方で、諫早湾など湿地の破壊を固定化する根強い動きが厳然と存在します。この会議は湿地の現場での取り組みにしっかりと軸足を置きつつ、国内・国際的交流を通して現場の湿地保全を進める道を模索する試みでした。

第11回日韓NGO湿地フォーラム集合写真


■各国NGOからの発表と討議
 会議は4部構成で、「1・国際条約にとってNGOはどんな存在か?」では、ルー・ヤンさんから、NGOの提案でできたラムサール条約は決議・勧告を通してNGO・地域住民・先住民の貢献を確認してきたことなどの説明がありました。ラムネットJからは、政府に働きかけて採択された水田決議等の採択までの過程について発表しました。
 「2・地域NGOの活動にとって国際条約はどんな力になるのか?」では、長良川・韓国4大河川などにおいて河口堰など水の流れを妨げ、生きものや人々の生活への悪影響が固定化される事例がある一方で、コロンビア・韓国・日本で国際協力を通して展望が開かれる事例も発表されました。
 そして「3・国際条約会議に向け地域NGOはどんな働きかけをしてきたか?」におけるWWNや、韓国の湿地運動の活動の発表をもとに「4・地域NGO・国際条約・国際協力のこれから」というテーマで話し合いました。ここでは資金や言語の壁の問題、また行政や司法の壁など、さまざまな問題が提起されました。同時に湿地の大切さを知らせ、また各湿地の問題を世界と共有する場の重要性が指摘されました。また、ルー・ヤンさんからは条約の中にNGO意見を尊重する流れがあることと同時に、モニタリング・国別報告書などを通して地域から貢献できるという提案もありました。
 COP12以降、活動が停滞していたWWNは、この会議をきっかけに、新議長が確定し、戦略計画を策定して、2018年のラムサールCOP14に向けて動き始めました。またKWNNと協力して、COP14に焦点を当てた第12回フォーラムを2017年に韓国プサンで開催することが決まりました。

第11回日韓NGO湿地フォーラム
「3・国際条約会議に向け地域NGOはどんな働きかけをしてきたか?」での発表の様子
長良川エクスカーション
長良川流域を視察したエクスカーション

■長良川でのエクスカーション
 翌31日はエクスカーションで、海外ゲストと共に長良川の中流から河口までの視察をしました。上流にダムがなく、岐阜市内では鵜飼いで有名なアユが産卵し、また顔も洗えるほど澄んだ長良川が、河口堰に近づくに従って濁りが増して、ダムがある揖斐川よりも環境が悪化していました。漁業にも大きな影響が出ており、流れる水をせき止める時に起こることを目の当たりにしました。
 この会議は2016年4月からラムネットJが自然保護助成基金の提携助成を受けて取り組んでいる、地域NGOとラムサール条約との関係を検討するプロジェクトの一環として実施されました。

ラムネットJニュースレターVol.26より転載)

2017年02月27日掲載