湿地巡り:河北潟(石川県)

河北潟湖沼研究所理事長 高橋 久

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 日本海側には海に近い場所に潟と呼ばれる浅い湖が多くあります。これらはもともとは海であったところが砂丘の伸長などによって湖となったもので、海跡湖といわれます。日本海側の潮間帯はせいぜい30cm程度しかなく、干潮と満潮の差がきわめて小さいことから干潟はできませんが、いずれも浅い水域であり、周辺にも小規模な沼地があったり泥田があった場所ですので、湖と言うよりは湿地という言葉がぴったりです。
 石川県でも、河北潟のほか、赤浦潟、福野潟、邑知潟、木場潟、今江潟、柴山潟、北潟湖などがあり、このうちいくつかは既に干拓されるなどして潟が消滅してしまいました。河北潟も約50年前に国営干拓事業が始まり、湖の面積が1/4ほどになりました。本来は海とつながった汽水湖でしたが、農業用水を取るために防潮水門が建設され、現在は淡水湖となっています。

河北潟
干拓事業で淡水化された河北潟の湖
河北潟
湖岸のクリーン作戦

 干拓事業は、もともと水田をつくるために行われたものですが、事業の途中で減反政策が始まり、干拓地ができたときには水稲はつくれなくなりました。そこで入植した農家は畑作を始めましたが、水はけの悪い土地であるとともにもともと稲作中心で畑作の経験がなかったため、営農にはたいへん苦労したようです。また、入植者が足りないため、県内の酪農家を誘致しました。それでも約200ha、1/5の農地が売れ残りました。干拓地の農業は、畑作の失敗や乳価の低迷、未利用地の増加など、当初さまざまな問題を抱えていました。一方、淡水化された残存水面は富栄養化し、さらに堤防で人の視線から遮られるとともに濁って底が見えなくなった湖岸は、大型ゴミを不法投棄するのに最適な場所になりました。
 私たちが活動を始めた1990年代の河北潟は、そんな絶望的な状況でした。その後、干拓地の活性化の取り組みや河北潟クリーン作戦の推進などで、干拓地は活気ある農地に、河北潟は人々が憩うゴミのない水辺に変わりつつあります。しかし、潟の富栄養化は改善せず、透明度は40cm程度しかありません。私たちは潟に再び海水を入れることを提案しています。

ラムネットJニュースレターVol.29より転載)

2017年11月23日掲載