第12回 日韓NGO湿地フォーラム報告

ラムネットJ理事 陣内隆之

 9月23〜24日、ラムネットJは、韓国湿地NGOネットワーク(KWNN)、世界湿地ネットワーク(WWN)などとの共催で、第12回日韓NGO湿地フォーラムを韓国プサンで開催しました。
 はじめに、2015年に開門宣言をしているプサン市より、ナクトンガン河口堰の水門開放問題について、深刻な環境悪化の現状と開門への期待が報告されました。続いて、荒瀬ダム撤去による自然再生の経緯や今後の課題などを、つる詳子さんより報告していただきました。荒瀬ダムの撤去は四大河川事業問題に取り組む韓国の関係者の間でも注目されていて、この報告も韓国のメディアで報道されました。
 また、韓国からはDMZ(北朝鮮との国境の非武装地帯)とイムジン河の湿地、西海岸にあるファソン湖湿地の開発計画について、日本からは泡瀬干潟埋め立て、諫早湾干拓事業および石木ダムの問題を報告しました。日本国際湿地保全連合(WIJ)の横井謙一さんからの「日本の重要湿地とラムサール条約登録湿地における公共事業」の報告では、日本の湿地の多くが劣化傾向にあり、その要因の半数以上が開発など人間活動によるものであることが確認されました。

第12回日韓フォーラム1
フォーラムの前日に行われたエクスカーション。ナクトンガンのハマン堰では、水質悪化が大問題に
第12回日韓フォーラム2
今回のフォーラムは、韓国プサン広域市庁内の大会議室で2日間にわたって開催されました

 2日目は、まず来年10月のラムサール条約第13回締約国会議(COP13)の開催国であるUAEのジャッキー・ジューダスさんから、中東の湿地NGOの活動などが報告されました。続くWWN議長のルイーズ・ダフさんの報告「WWNの戦略計画」では、10月に新たな体制が決まること、「湿地調査」と「NGOとのコミュニケーション」の2つをプロジェクトとして取り組むことが紹介されました。ちなみに、WWNは世界の141団体が加盟し、460万人の市民が参加しているとのことです。「湿地調査」の報告では、世界から350の回答(アジアは40)があったとのことですが、問題のある湿地からの報告が少ないことが気になりました。午後の討論では、まずラムネットJの柏木実共同代表からCOP13に向けたスケジュールなどの解説があり、KWNNのパク・チュンロク代表より韓国側の準備に関する報告がありました。

第12回日韓湿地フォーラム
第12回日韓NGO湿地フォーラムに参加された皆さん


 討論を通じて、ラムサールCOP13の登録やイベント申し込みなどは来年4月からではないかとの見通しがあり、次回の日韓フォーラムは来年4月下旬に行う方向で調整することになりました。COP13に向けては、COP14での決議を見据えて、「水の流れの大切さ」をアピールする日韓共同のサイドイベントを行うことが確認されました。
 11月に佐賀市で行われるアジア湿地シンポジウムに向けては、シンポジウムで採択される佐賀宣言(Saga Statement)に反映させるために、諫早湾干拓事業をはじめとする水の流れを阻む人工物建設が湿地破壊をもたらす大きな要因であることを問題提起する提言を出すことが決まりました。

ラムネットJニュースレターVol.29より転載)

2017年11月23日掲載