第3回 田んぼ10年プロジェクト全国集会報告

ラムネットJ共同代表 安藤よしの

 東京・秋葉原で8月20日に開催した第3回田んぼの生物多様性向上10年プロジェクト全国集会の様子を簡単に報告します。この集会は、2020年まで、2020年以降と、田んぼ10年プロジェクトをさらに進めるための議論を深めることを目的として開催しました。

●基調報告
 まず、ラムネットJの呉地正行共同代表がプロジェクトの進捗状況を発表した後、国連食糧農業機関(FAO)の持続可能な農業プログラムの主席オフィサー、マティアス・ハルワートさんが『持続可能な食料および農業と国連持続可能な開発目標(SDGs)のためのFAO共通ビジョン─水田の生物多様性の例、そして人々・暮らし・自然に対するその重要性』と題して報告しました。
 ハルワートさんは、米そのものや、田んぼに生息する魚類をはじめとした生きものの種には、非常に多くの多様性があり、特にアジアの伝統的な農業において顕著であるものの、農薬の使用によりそれらが損なわれてきていると警告しました。そして、田んぼに関係する主な持続可能な開発目標としては、6=水と衛生、13=気候変動、14=海洋資源、15=陸上資源などが考えられるとし、良好に管理された田んぼは、生物多様性豊かな統合的な農業システムであり、農家の生態学的知識の向上が、農地の回復力の向上や、より栄養に富んだ作物の生産をもたらし、農業をより持続可能なシステムへと導くと述べ、農家の人々の参加型フィールドスクール方式のアプローチは成功率が高いことなどを指摘しました。

第3回田んぼ10年全国集会
マティアス・ハルワートさんの基調報告
第3回田んぼ10年全国集会
コープデリの試食コーナー

●各セクターからの報告
 (1)農業者:民間稲作研究所の稲葉光國さんは、『生物多様性を育む循環型有機農業の進展』という報告の中で、長期残留殺虫剤の登場により「沈黙の春」が再来していること、循環型の有機輪作農業(麦、ナタネ、稲、大豆)で、生物多様性の向上と地球温暖化防止をめざす取り組みが図れることなどを発表しました。
 (2)市民団体:NPO田んぼ代表の岩渕成紀氏さん、田んぼの生きもの認証制度の可能性を探るための、4つの簡単な調査方法による田んぼの生物文化多様性指標について発表しました。
 (3)生活協同組合:コープデリ小林新治さんは、『生産者と消費者のフードチェーンで繋がる田んぼとお米と環境』の事例として、コープデリで取り組む「佐渡トキ米お米プロジェクト」「お米育ち豚プロジェクト」などを紹介しました。
 (4)地方自治体:いすみ市農林課の鮫田晋さんは、いすみ市の自然と共生する里づくりの中で、いすみ生物多様性戦略と有機稲作、学校給食における有機米の使用などについて報告しました。
なお、予定していたパネルディスカッションは、時間の都合で、中止せざるを得なくなりました。大変申し訳ありませんでした。

●展示と試食
 コープデリの協力により、参加者全員が生物多様性に配慮して作られたトキ米の焼きおにぎりと、お酒・お茶をたっぷりと味わうことができました。またJA全農、かわごえ里山イニシアチブ、NPO田んぼなどによる展示が行われました。

第3回田んぼ10年全国集会
今回の集会に参加された皆さん

ラムネットJニュースレターVol.29より転載)

2017年11月23日掲載