まず食べること──野生で生き抜くために

賀市鴨池観察館 田米希久代

 2018年1月から2月にかけて北陸を襲った大雪は、豪雪地帯だったことを改めて思い知らすように、市民生活に大きな影響を及ぼしました。
 片野鴨池はほとんどが凍結し、流れ込む2本の水路の流入口近くの水面が開いて残っているだけで、水鳥たちはそのわずかな水面付近に密集して日中を過ごしていました。マガンが帰って来る夕方、交代するようにカモたちは周辺のたんぼへと餌を食べに行きます。本来なら鴨池周辺のたんぼには水が自然にたまっていて雪が解けている部分も多いので、彼らは餌場に苦労しませんでした。今年は雪で餌場を見つけにくかったのではないかと思います。また、たんぼをねぐらにしていたコハクチョウは鴨池に集結し、1300羽あまりが終日、池の中で寒さに耐えていました。鳥は高い体温を維持するためにたくさん食べなければいけません。餌がとれないので雪の少ない場所へ移動したのでしょうか、雪が厳しい間はカモ類の数が目に見えて減りました(後日戻ってきました)。

左右にコハクチョウ、ガン類、カモ類がひしめく
左右にコハクチョウ、ガン類、カモ類がひしめく
手前までやってきたトモエガモ(中央)
手前までやってきたトモエガモ(中央)

 雪が止むと、餌を求めての動きが活発になります。いつもは慎重な鳥たちも危険を冒して普段は来ない場所に来ます。通常は対岸付近に群れているトモエガモが観察館正面のたんぼへとどんどん歩いて入ってきました。スズメやホオジロ類も餌を求めて、意を決したかのように雪間から稲藁が出ているたんぼに降りてきます。ダイサギがそれを捕らえて弱らせ丸呑みしたり、モズがシロハラを捕食したりする印象的な光景が見られました。
 人間の感情とは関係なく、野生のいきものは自分で食べられなければ終わりです。捕るものも捕られるものも生命をつなぐために一生懸命で、それぞれの役割を果たしているんだと強く感じました。

ラムネットJニュースレターVol.31より転載)

2018年05月03日掲載