辺野古の新基地建設工事による環境への影響

日本自然保護協会/ラムネットJ理事 安部真理子

 普天間代替施設建設事業が進む辺野古・大浦湾にはさまざまな種類や形のサンゴ群集、海草藻場、マングローブ、干潟、泥地、砂場などが一つのセットを作り上げており、これだけの規模と健全さをもつサンゴ礁生態系は日本全国を見ても希少で価値があります。
 この場所の生物多様性の価値は国内外で認められています。生物多様性のホットスポットであり、防衛省の環境影響評価書では5334種もの生物が海域から記録され、そこには262種もの絶滅危惧種が含まれています。

沖縄島周辺にて最大の規模をもつ辺野古の海草藻場で進められている護岸工事の現場
沖縄島周辺にて最大の規模をもつ辺野古の海草藻場で進められている護岸工事の現場
上空から見た新基地建設工事の様子
上空から見た新基地建設工事の様子

 2014年7月よりボーリング調査等の作業の実施のため臨時制限区域が設置され、2016年12月に沖縄県がいったん取り消した公有水面埋め立て承認を復活させたことから、工事が再開されています。事前の作業および工事の環境への影響はすでに出ています。
 一つには臨時制限区域を示すフロートを固定するために300個近くもの大小さまざまなサイズ(13〜45トン)のコンクリートブロックが沈められていることです。市民団体によりサンゴがブロックにより押しつぶされている場面が2015年に目撃されて以来、事業者はサンゴと海草の上は避けて設置しているようですが、泥場、砂場、ガレ場などに棲んでいる生物等については考慮されていません。また大浦湾の生物多様性の高さは海底の地形の多様さが基になっていますが、ブロック設置により地形が平坦になる可能性があり、また海流が変わる可能性もあります。一つ一つの規模が小さいため環境アセスの対象にはなっていません。
 ジュゴンの行動にも影響が出ています。沖縄島周辺には国の天然記念物であり絶滅危惧種である4頭のジュゴンの生息が確認されています。そのうちの1頭の個体Cと名付けられたジュゴンが4年前の5〜7月の2か月で150本以上のはみあとを大浦湾に残したことがありました。今その場所にはK9と呼ばれる200mの規模の護岸が建てられています。個体Cは2015年5月以来この海域を利用しなくなりました。物理的に海草藻場が消失したこと以前に、2014年7月より臨時制限区域設置に伴い警備が強化され、生き物への配慮を欠いたスピードで船が航行すること、工事に伴う騒音などが音に敏感なジュゴンにとって問題であったのだと思います。
 従来から多くの環境団体や研究者から指摘があったように、この事業にかかる環境アセスメント(環境影響評価)には科学的に多くの問題があり、住民との合意形成や情報公開という点でも多くの問題があるアセスでした。書かれている環境保全措置も問題のあるものばかりです。
 なかでも生物の移動・移植・造成に関する環境保全措置は大きな問題です。甲殻類や貝類などの底生生物についてはすでに移動が行われていますが、移動させた生き物の大半は追跡調査すらなされていません。
大浦湾でのサンゴの産卵

大浦湾でのサンゴの産卵

 サンゴについては移植、海草については移植・造成が保全措置としてあげられていますが、サンゴの移植についてはサンゴを移植してもサンゴ礁にはならないことから技術の未熟さが指摘されており(日本サンゴ礁学会、2008)、海草についても移植の前例がないことが指摘されています(日本自然保護協会、2013)。
 そもそもサンゴの移植は、移植されるサンゴが最大限生き延びられるよう、工事の前に行うことが一般的であり、環境アセス書にも工事の前にサンゴの移植を行うことと書かれています。
 また日本サンゴ礁学会保全委員会も指摘していますが、サンゴ類の移植・移築元の水深を20m以浅の範囲とすること、小型サンゴは長径10cm以上とすること、大型サンゴは長径1mとすることなど移植対象を制限していることが問題です。水深29mの深い水深に棲むコモチハナガササンゴなどは移植もされずに工事が進められることになります。また今年になりレッドリストが改定され、掲載されている種類が事業実施区域にも生息していることがわかりました。希少なサンゴ類も失うことになります。
 このようななか7月13日に希少なオキナワハマサンゴ9群体の移植の許可(特別採捕許可)が沖縄県から沖縄防衛局に出されました。この前例により、沖縄防衛局が予定している7万4300群体のサンゴの移植も認めざるを得ない可能性が高いことが懸念されます。同様に考える市民が説明を求め、またこの許可を無効にする公有水面埋め立て承認の撤回を求め、県庁前で座り込み、知事との面会を求め県庁に詰めかけているとのことです(NHK沖縄、7月17日)。
 沖縄県知事が撤回をすることにより、事業者が環境保全を行っていないという点が明らかになり国内外に問題を訴えることができます。また一時的となるかもしれませんが、この1年半ほど続けられてきた工事も止まることになります。辺野古・大浦湾のサンゴ礁の保全を強く願っています。
  
ラムネットJニュースレターVol.32より転載)

2018年08月28日掲載