中津干潟の保全に向けた活動の近況とアカニシ染め

水辺に遊ぶ会理事長 足利由紀子

 11月に入り中津干潟では、ハマシギの数がどんどん増え、ズグロカモメやクロツラヘラサギなどの鳥たちも渡ってきました。また、数千羽のヨシガモの群れも今年も健在です。
 水辺に遊ぶ会の中津干潟の保全活動は来年で20年を迎えます。目的も活動内容も20年前と変わりませんが、相変わらず地域での干潟保全に向けたコンセンサスを得ることができず、スタッフの高齢化や資金不足など課題が多い毎日です。それでも、前回この場で報告させていただいてから、いくつか新しい取り組みや活動を始めましたので近況報告です。
●近況その1
 中津干潟を望む小さな漁港の一角に活動拠点として「小さな干潟の博物館─ひがたらぼ」を開設しました。ネコの額ほどのプレハブ小屋ですが、拠点ができたことで、地域の方々や漁師さん、子どもたちや大学生、行政の方などが日々遊びに来てくださり、環境学習や情報発信、交流の場になりつつあります。ひがたらぼの窓からは、シギチの群舞やズグロカモメがカニをつかまえる様子などを観察することもできます。願わくばもう少し広いといいのですが(笑)。
●近況その2
 中津干潟で研究を行っている若手研究者や大学生の情報交換、市民と研究者の交流、干潟研究の発展を目的に、緩やかなネットワーク「中津干潟アカデミア」を立ち上げました。3月に第1回の研究発表会、夏には研究者や大学生による子ども向けワークショップなどを実施、12月23日には第2回研究報告会を実施する予定です。自然科学や生物、地域の自然に興味を持つ子どもや若い人材が育つよう、期待を込めて活動しています。

アカニシ
アカニシ
アカニシ染め
アカニシ染め

●近況その3
 この夏、新しい試みとして「アカニシ染め」に取り組みました。干潟でおなじみの巻貝のアカニシは、中津では漁師さんが漁獲して流通にのっている食材です。とてもおいしい貝です。この貝から染料が取れることを知り、挑戦したいとかねてより思っていましたが、大分大学の被服の先生のご協力で実現しました。アカニシなどのアッキガイ科の貝で染める「貝紫」は帝王紫などと呼ばれ、世界で最も高貴な色としてシーザーのマントやクレオパトラの船の帆などにも使われていたといわれています。硬い殻を割り、内臓の一部「鰓下腺」を取り出して水と一緒にミキシングしたら布を浸し、太陽の元に。黄色い液は紫外線で緑色に変化し、次に紫色へと変わります。この色の変化が不思議で興味深いのですが、色が変わる時に臭素が放出されるため、ものすごく臭いのが難点。もちろん染料を取った後のアカニシはおいしくいただきます。

子どもたちもアカニシ染めを体験
子どもたちもアカニシ染めを体験


 次の10年も中津干潟と一緒に歩いて行けたらいいなあと思っています。

ラムネットJニュースレターVol.33より転載)

2018年12月15日掲載