シンポジウムレポート 九州から世界の湿地を考えた日

ふくおか湿地保全研究会 富山雄太

ラムネットJシギチ・ヘラシギ部会が主催するシンポジウム「九州から湿地・ヘラシギ・シギ・チドリたちを守る」が2019年2月2日(世界湿地の日)、福岡県福岡市において開催されました。
 1つ目のプログラムは国際会議に関する報告でした。最初に、永井光弘さんが昨年10月、ドバイで開催されたラムサール条約第13回締約国会議の報告を行いました。条約が2月2日と定める世界湿地の日を国連の記念日と定めるよう求める決議や、潮間帯湿地保全、湿地と農業などに関する決議が採択されたそうです。生物多様性が高い潮間帯湿地の保全に関する決議はとても意義深いことだと感じます。続いて、柏木実さんによる東アジア・オーストラリア地域フライウェイパートナシップ第10回参加国会議(昨年12月、中国海南島)の報告がありました。新しく北朝鮮が参加し18カ国がパートナーとなったそうです。またハマシギは亜種によって渡りルートの傾向が異なるという調査結果が示されました。亜種ごとの繁殖地・中継地・越冬地を意識した保全活動が重要になるだろうと感じます。
シンポジウム「九州から湿地・ヘラシギ・シギ・チドリたちを守る」
 2つ目のプログラムでは、九州の3地域からの報告を受けました。はじめは、服部卓郎さんによる「博多湾 失われた生息環境の再生」というテーマの報告でした。博多湾東部の多々良川河口域において、止まり木や岩場を造成して、休息場や餌場を再生する取り組みが紹介されました。しかし、ここ数年、博多湾ではシギ・チドリ類の飛来数の減少が著しいということです。
 次は高野茂樹さんによる「八代海 条約湿地登録に向けた努力」というテーマの報告でした。球磨川河口に飛来するシギ・チドリ類の種の組み合わせを解析し、球磨川河口が渡り鳥にどのように利用されているかを明らかにしていました。条約湿地登録に向けて着実に歩を進めている様子が伝わってきました。
 最後は中村さやかさんによる「有明海 3つの条約湿地の協力」というテーマの報告でした。有明海には肥前鹿島干潟、東よか干潟、荒尾干潟の3つの条約湿地があります。この3干潟それぞれで水鳥・湿地センターが建設中であり、完成予想図や課題等が紹介されました。また示し合わせたかのように同時期にオープンするそうで、これを機に有明海の干潟がもっと注目されてほしいと思います。
 3つ目のプログラムでは、松本悟さんによるクロツラヘラサギに関する報告がありました。世界的に生息数が増加傾向にあるということで、クロツラヘラサギの保全活動に関わってる私も大変うれしく思います。またクロツラヘラサギに関する絵本を作成し、子どもたちへの普及啓発にも力を入れているということでした。

ラムネットJニュースレターVol.35より転載)

2019年05月01日掲載