湿地巡り:池ヶ原湿原(福井県)

池ヶ原湿原保全・活用協議会事務局(福井県自然保護センター)

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 池ヶ原湿原は、福井県の大野市から勝山市の標高500〜600mに広がる六呂師高原にある、約3haの湿原です。経ヶ岳の火山活動によって形成された台地の凹地に湧き水や雨水がたまり形成されました。池ヶ原湿原の植生は、ミズチドリ、カキラン、モウセンゴケ、トキソウなどの植物が生育します。昆虫では、ギンヤンマ、ショウジョウトンボなどのトンボが飛翔し、木道では、コバネイナゴやヒメギスなどのバッタ類に出会えます。また、池の中にはモリアオガエル、アカハライモリ、ドジョウ、イシガメ、オオコオイムシ、ガムシなどがみられます。池ヶ原湿原は、古くから人々にも利用されてきました。江戸時代には、お殿様が菖蒲の花見をし、お百姓さんが湿原のヨシを利用して雪囲いのヨシズを作っていました。非常に雪深い地域ですので、ヨシは大変重宝されました。
 しかし、池ヶ原湿原は昭和40年代に牧場が整備され、乾燥化・富栄養化が進みました。またヨシの利用も衰退したため、植生遷移が進みました。その結果、池ヶ原湿原には樹木やヨシが茂り、暗い環境になり、背丈の低い湿地植物は減少しました。景観的にも開放感がなく立ち入りにくくなりました。

自然観察会
自然観察会
ヨシ刈り活動
ヨシ刈り活動

 そこで2009年から水環境の改善やハンノキの除去など、湿原の再生作業を行った結果、湿地植物の生育量が増加しました。2014年には再生した湿原植生を維持し、地域の財産として賢明な利用を進めるため、専門家や地域の企業・団体・学校・行政からなる「池ヶ原湿原保全・活用協議会」を設立しました。現在協議会では、湿原保全のための調査や定期的なヨシ刈り活動、外来種の駆除活動、自然観察会、小学校の環境教育などを行っています。
 さまざまな主体が力を合わせ活動していますが、解決されていない課題も多く、今後も多くの方の協力を必要としています。まずは、池ヶ原湿原の花々を楽しみにお越しいただき、池ヶ原湿原のファンになっていただければと思います。

ラムネットJニュースレターVol.36より転載)

2019年08月28日掲載