報告:ラムネットJ設立10周年シンポジウム〈第1弾〉ラムサール・ネットワーク日本10年 成果と課題

 ラムネットJでは設立10周年シンポジウムの第1弾を、6月22日に東京で開催しました。最初に前共同代表(総会での役員交代に伴い役職名に前/新を付けています)の堀良一さんが開会の挨拶を述べ、続いて韓国湿地NGOネットワーク(KWNN)のマ・ヨンウンさんから祝辞をいただきました。

【第1部】ラムネットJの歩みを振り返る
 第1部では、前共同代表の安藤よしのさん、柏木実さん、呉地正行さん、堀さん、前川盛治さんに、マさんも加わって、前事務局長の浅野正富さんの司会で座談会を行い、登壇者全員でラムサール条約締約国会議(COP)と日韓のNGOの動きを振り返りました。
 バレンシアでCOP8が開かれた2002年頃は、諫早や泡瀬の問題で日本の湿地保全運動が大きく盛り上がった時期でした。韓国でもセマングム干拓が問題となり、COP10を韓国に誘致しようという動きが起こりました。しかし2005年のウガンダでのCOP9ではNGOの活動の場が非常に乏しく、その反省から2008年のCOP10チャンウォンでは日韓が協力してNGOの活動の場を作っていこうということになりました。それが日本ではラムサールCOP10のためのNGOネットワーク、韓国ではKWNN、国際的には世界湿地ネットワーク(WNN)の結成につながりました。その結果、COP10では日韓をはじめ世界のNGOが連携して活動し、水田決議が採択されるなどの成果を挙げることができました。
 COP10の終了後、ラムサールCOP10のためのNGOネットワークを引き継ぐ形でラムネットJが結成されました。水田など内陸湿地とのネットワークを広げ、生物多様性条約の関連事業にも参加して活動の幅を広げていき、今日に至ります。開発への対抗だけでなく、CEPAなどを通して湿地保全の枠組み全体を強化していくことが大切であり、それがラムネットJの10年の活動であったと、堀さんが締めくくりました。

第1部
第1部
第2部
第2部

【第2部】今後の湿地保全とラムネットJの活動を考える
 第2部の前半では、地域からの話題提供として5人の方の報告がありました。
 トトロのふるさと基金の北浦恵美さんは、集会に招いたラムネットJの陣内隆之さんの講演を通して、狭山丘陵の湿地が国の重要湿地に選定されていることを知り、保全の重要性を訴えることができたそうです。また、その集会に参加していた椎津川水系と里山を愛する会の平野なおみさんから、持ち帰った湿地のグリーンウェイブのリーフレットに心を動かされ、グリーンウェイブに参加することになったという話がありました。
 かわごえ里山イニシアチブの増田純一さんは、田んぼの生物多様性10年プロジェクトの行動計画を基本に実施している、化学肥料や農薬を使わない米作りの取り組みについて発表しました。日本野鳥の会東京の東良一さんは、カヌー場建設の変更を求める運動を契機に、ラムネットJと連携しながら進めていった葛西海浜公園の条約登録について報告しました。日本自然保護協会の安部真理子さんは、沖縄の埋め立て問題について発表し、国際条約などで世界では自然保護の機運が高まっている中、日本は逆行していると批判しました。
 第2部後半は新共同代表の金井裕さん、陣内さん、高橋久さん、永井光弘さんと、5人の話題提供者による意見交換が行われました。
 陣内さんは、北浦さんや平野さんの事例のような、ラムネットJがサポートできる案件は、各地域にあるのではないかと指摘しました。増田さんからは、2020年からの田んぼ10年の行動計画で、水田の生き物の重要性について農家の理解を促進するような内容を期待しているとの意見があり、高橋さんからは河北潟の水田での参考事例の紹介がありました。
 金井さんからは、葛西の登録において日本野鳥の会東京と一緒に行動して行政との調整を行ったことなどの説明がありました。東さんはラムネットJに対して、特に条約登録を進めるための情報提供を期待しているとのことです。
 安部さんは、国際条約では国内の法律や仕組みに直接影響を与えることができないけれども、条約を通して問題を周知させていくことが大事であると述べました。永井さんも、そのためには重要な文書を翻訳して、使いやすくすることが大切であると指摘しました。

シンポジウムに参加されたみなさん
シンポジウムに参加されたみなさん


 会場からは、登録基準を満たしていないような湿地での条約の使い方、日本湿地ネットワークとの関係修復や河川などの他団体との連携といった今後の課題の指摘、ラムサール条約を根拠に新幹線問題を訴えることができた中池見湿地の事例紹介などがありました。
 最後に永井さんが、賢明な利用、湿地登録、国際協力という条約の3つの柱のそれぞれの分野で、今後もラムネットJの活動を進めていきたいと述べて、シンポジウムは終了となりました。
(ラムネットJ事務局)

ラムネットJニュースレターVol.36より転載)

2019年08月28日掲載