報告:田んぼの生物多様性向上10年プロジェクト 第10回 地域交流会in福井(敦賀市)

ラムネットJ共同代表 上野山雅子

 2019年11月2~3日、福井県敦賀市にて、田んぼの生物多様性向上10年プロジェクト地域交流会─里地の田んぼの多様性と育まれる生きものたち─を開催しました。
 交流会に先立ち、2日午後は田んぼめぐりとして、どちらもラムサール条約湿地である中池見湿地と三方五湖を訪れました。中池見湿地では市民サポーターによって保全されているミニ田んぼを、三方五湖では三方湖を望む自然観察棟を視察後、若狭町の自然農法で耕作されている田んぼを見学しました。無農薬・無施肥の自然農法の現場でその実践について熱心なやりとりがありました。翌3日午前には、田んぼめぐりの続きとして、敦賀市内の奥野地区と沓見地区の田んぼを訪問。奥野では草取り要員として活躍しているヤギたちに癒され、沓見では慣行田にもかかわらず特定の田んぼにだけ確認されるミズネコノオやスズメノハコベを熱心に観察、カヤネズミの巣も見つけるなど楽しい時間となりました。

沓見地区の田んぼの見学
沓見地区の田んぼの見学
地域交流会in福井の会場の様子(プラザ萬象・小ホール)
地域交流会in福井の会場の様子(プラザ萬象・小ホール)

 3日午後から行われた交流会には約40人が参加。基調報告として舩橋玲二さんより田んぼ10年プロジェクトについて、続いて里山里海湖研究所研究員の石井潤さんからは、三方五湖自然再生協議会での「湖と田んぼのつながり再生部会」の取り組みや、「環境に優しい農法部会」による生き物をシンボルとしたお米のブランド化について紹介がありました。お米のブランド化は厳しい基準を設け高値で売るということではなく、環境保全の取り組みや考え方を地域に広げることを目標としているとのことでした。
 地域からの報告では、奥野地区の美しい風景を残したいと農業を始めた岸本拓哉さんからは地域の田んぼを一人で担うご苦労とそれでも地域を元気にしたいという思い、仲間たちと始めた活動が語られました。また日頃は中池見湿地で主に活動している中池見ねっとの藤野勇馬さんからは、この地域交流会をきっかけに行った市内の田んぼの生き物調査によってそのポテンシャルの高さと同時に後継者不足により失われつつあることが報告されました。

地域交流会in福井に参加された皆さん
地域交流会in福井に参加された皆さん


 後半の討論では、「これほど、生き物のことを考えているわけではない、という言葉が多い交流会は初めて(笑)」と閉会の挨拶で言わしめるような意見のやりとりでしたが、それぞれの田んぼへの思い、在り方を知り、あらためて田んぼも多様でありそれでいいのだと感じました。合わせてこれを機会に、驚くほど豊かな自然が残っていることを当たり前と思わず、大切な宝として地域の皆さんに認識していただくために何をすべきか、新たな宿題をいただいた地域交流会となりました。

2020年03月05日掲載