湿地巡り:島田湿地(周伊勢湾湧水湿地群・愛知県)

白玉星草と八丁トンボを守る島田湿地の会 大里 齊

 島田湿地(島田緑地自然生態圏)は、名古屋東部丘陵に存在する湧水湿地です。今では、住宅に囲まれた約2.9haが残され、名古屋市の管理になっています。湿地面が標高60mで非常に高いところです。そんなところになぜ湿地が? また、この丘陵は、焼き物の猿投窯の中心地です。湿地と焼き物...その心は? 粘土層です。その粘土層の上に滞留した雨水が湧水となって湿地を形成しています。約500万年前に存在した東海湖に花崗岩が風化してできた粘土が堆積したものです。この湿地は林の中に明るく開けた空間を持ち、粘土層の上にこぶし大のチャート(珪石)が点々と存在し、その石の回りから水がしみ出しています。いわゆる干潟とは全く違います。

島田湿地の地図
シラタマホシクサにとまるハッチョウトンボとサギソウ(撮影:徳竹善重
シラタマホシクサにとまるハッチョウトンボとサギソウ(撮影:徳竹善重)

 この湿地の魅力は、シラタマホシクサとハッチョウトンボです。シラタマホシクサは、名古屋東部丘陵を中心とした尾張/三河/伊勢の湿地に生える貴重な植物です。初秋の湿地を白く星をちりばめたように埋め尽くす様は圧巻です。トンボはかつて37種類を数え、現在は26種と多くのトンボを見ることができます。中でもハッチョウトンボは、体長2cmに満たない世界最小です。2015年に実施された生物調査データによれば、レッドリストに載っているシラタマホシクサ/モウセンゴケ/ミミカキグサ/サワギキョウ/ヤチヤナギなどの植物12種、オオミズゴケなどコケ植物3種、ハッチョウトンボ/ヒメタイコウチ/サラサヤンマなどの昆虫8種、クモ類2種が記録されています。

シラタマホシクサ観察会(撮影:大角守)
シラタマホシクサ観察会(撮影:大角守)
シラタマホシクサ(撮影:徳竹善重)
シラタマホシクサ(撮影:徳竹善重)

 この湿地は保全区域と再生区域に分けられ、保全区域は年2回の自然観察会(6月開催のハッチョウトンボ観察会と9月のシラタマホシクサ観察会)と3月のショウジョウバカマと8月のサギソウ観察会で公開されます。再生区域は4月~10月の土日祝日に公開され、地域住民の憩いの場になっています。「白玉星草と八丁トンボを守る島田湿地の会」は、毎月第3日曜日に保全活動をしています。

ラムネットJニュースレターVol.41より転載)

2020年12月20日掲載