国別報告書を通じて地域からの情報をラムサール条約事務局に届けよう

ラムネットJ事務局長 後藤尚味

■「国別報告書」とは
 3年に一度開催される締約国会議(COP)の前に、ラムサール条約は締約国から収集する「国別報告書」の情報を基に、世界の湿地の変化、条約実施状況をとりまとめてCOPへ報告し、次の3年間の計画の議論のための資料にします。またこの資料はデータベース化して条約湿地管理のための情報として有効活用されることになります。
 締約国は、求められた様式に基づいた調査を行うことで、条約が実施できているかを確認し、国内の湿地状況を知り自国の国家戦略の策定に役立てられるようにという二重の狙いがあります。
 「国別報告書」の様式は、条約湿地を対象とした設問と、それ以外の国内のすべての湿地を対象とした設問とに分かれています。これまで環境省は、条約湿地を対象とした調査を行ってきましたが、すべての湿地の保全という条約の目的の観点から、条約湿地以外の情報が含まれないことが気になっていました。
 ラムサール条約の事務局は、この基礎資料を締約国だけでなく、非政府組織(NGO)からの情報も組みこんで作ってきました。その理由は、ラムサール条約がNGOの発案でできた条約であることもありますが、湿地の保全・賢明な利用と復元は、国だけでできるものではなく、何よりも、現場に密着した自治体、そして現場で活動している草の根NGOとの連携協力が不可欠だからです。

■アンケート調査の実施
 そこでラムネットJは2021年1月締め切りの国別報告書の作成を政府が準備するタイミングも考え、7月30日発行の会報にチラシを同封し、8月末締め切りのアンケート調査への協力を全会員に向けて呼びかけました。同時にウェブページ、会員メーリングリストでも呼びかけました。
 回収した回答数は32件、複数主体からの回答があったサイトもありましたので湿地数は30サイトでした。そのうち条約湿地は12サイト、それ以外の湿地が18サイトでした。この30サイトからの情報でも過去3年間で湿地の環境はどちらかというと悪化の傾向にあることが分かりました(図1)。この内容は、環境省が国別報告書を作成する時に生かせるよう9月17日に環境省へ提出しました。詳しい結果についてはPDFファイル(http://www.ramnet-j.org/file/rnj_nrf_cop14.pdf)をご参照ください。
 回答を集計している時、うれしい誤算がありました。環境省からの国別報告書調査アンケートがラムネットJにも届いたのです。その結果、会員の皆さまには、類似の調査を二度お願いすることになってしまいました。後者の調査にご協力いただけた皆さまの声も日本国際湿地保全連合を通じて、環境省に届けられています。

図1 ラムネットJの国別報告書アンケート調査より
図1 ラムネットJの国別報告書アンケート調査より
質問:この3年間(2018年1月以降)で、あなたの湿地の健康な状態に影響を与えるような出来事はありましたか?


■ラムサールCOP14の予定
 この後、国別報告書は、環境省のパブリックコメントを経て、条約事務局へ2021年1月21日までに提出されます。条約事務局のウェブサイトによると、COP14までのタイムラインは、2月に常設委員会の文書発行、決議案の提出、5月に常設委員会開催、8月にCOP 14の文書発行、そしてCOP14は11月に武漢で開催されるとあります。ただし、タイムラインは適宜調整されると補足があります。

ラムネットJニュースレターVol.41より転載)

2020年12月20日掲載