東よか干潟ビジターセンター「ひがさす」オープン

東よか干潟ビジターセンター ひがさす 古川尋美

 2020年10月20日、東よか干潟ビジターセンター「ひがさす」がオープンしました。
 国際的に重要な湿地として2015年5月にラムサール条約に登録された東よか干潟の自然環境および生物多様性の保全を推進するとともに、持続可能な利用による地域の活性化を図るため、佐賀市が整備しました。
 愛称の「ひがさす」には、ひがしよか、ひがたの「ひが」とsustainable(持続可能な)の「さす」や、有明海に陽が射すイメージ、「さが」「さがす」も隠れており干潟の生き物や魅力、佐賀市の魅力もさがしてほしいという意味が込められています。

生き物ゾーンの展示
生き物ゾーンの展示
展望台からは干潟や佐賀平野が一望できる
展望台からは干潟や佐賀平野が一望できる

 館内の「ひがたの旅展示室」では、[野鳥][生きもの][暮らし]ゾーンに分け、東よか干潟の概要や日本一のシギ・チドリ類の渡来地に訪れる野鳥の紹介、約50種類の干潟の生き物やムツゴロウなどの巣穴をかたどった樹脂標本、ワラスボの骨格標本など、東よか干潟の豊かな生態系を見て・聞いて楽しむことができます。また、「ひがたのシアター」では数千羽の野鳥の群れや有明海特有の生きものたちのダイナミックな映像をご覧いただけます。
 そして「ひがたのパノラマ展望台」では、地上より13mの高さから南側にはシチメンソウヤード、有明海の広大な干潟、遠くには長崎県の雲仙普賢岳などの山々が望め、北側では四季の佐賀平野の田園風景が楽しめます。
 「ひがさす」ではインスタグラムのほか、公式ホームページも開設し干潟のライブカメラ映像を配信します。

東よか干潟に飛来した渡り鳥
東よか干潟に飛来した渡り鳥
3年ぶりに紅葉したシチメンソウ
3年ぶりに紅葉したシチメンソウ

 東よか干潟周辺の特徴的な風景としては、シチメンソウの群生地があります。ヒユ科の一年草で、干潮時には陸地、満潮時には海水に浸るような環境に生育し、絶滅が危惧されている貴重な塩生植物です。生育の過程で色の変化がみられ、晩秋に鮮やかな紅紫色となり、東与賀海岸を真っ赤に染め上げるため「海の紅葉」とも呼ばれています。
 しかし、2018年10月に原因不明の立ち枯れで生育は厳しい状況でしたが、地元ボランティア団体の保全活動や大学との共同研究で排水対策、土壌改良等に取り組み、2020年秋には3年ぶりに「海の紅葉」を楽しむことができました。
 そして、ワイズユースの取り組みとして、シギをはじめとした多様な生き物と共生する米作りを目指し「シギの恩返し米プロジェクト推進協議会」が発足しました。
 「水田魚道」や「冬水たんぼ」により生物多様性の確保や、下水道由来の「じゅんかん発酵肥料」を利用した循環型農業の実証などの取り組みを経て生産された米を「シギの恩返し米」としてブランド化し、地元のみならず関東でも取り扱われ、高い食味評価から、大手百貨店にも取引されています。
 このような実績から、令和3年3月、農林水産省が推進する「未来につながる持続可能な農業推進コンクール」で、九州農政局長賞を受賞しました。
 このように、魅力が増した「東よか干潟」にぜひお越しください。

ラムネットJニュースレターVol.43より転載)

2021年05月22日掲載