やっと開かれたIUCN総会──対面の議論を通して決めるために

ラムネットJ理事 柏木 実

 昨年(2020年)9月に行われる予定であった国際自然保護連合(IUCN)の会員総会(WCC 2020)が2021年9月3日から14日までフランス・マルセイユで、ハイブリッド形式で実施されました。ラムネットJは、(日本のほかのNGO団体会員同様)最終的にリモートでの参加としました。
 4年ごとのWCCは毎回、参加者が1万人を超える大規模なイベントです。政府・政府機関(二百余)とNGO(九百余)の会員団体が4か年の活動計画と、世界の自然保護の課題について決議する総会と同時にフォーラムを実施します。地域で活動する団体がその活動に基づいた課題や活動について、広報・啓発のポスター発表や小集会、理解を深める討論を行い、総会の議論を深めるためです。世界の自然保護の活動を地についたものとすることを目的として、各国の団体がさまざまな企画を実施して、世界中の自然保護に関わる人びとに直接の交流の場を提供してきました。今回リモート参加ができるようになり、旅費の心配なしに多くの人が、地球上のいろいろな場所で行われている活動の困難さや意義を実感することができました。
 また総会では、IUCNの自然保護活動を決める議論に(リモート発言は難しかったので、ある程度)参加することもできました。一方では、対面の会議だからこそのやりとりがあり、現場のNGOと政策に携わる政府の団体会員からなるIUCNの存在意義を見て取ることもできました。そのことを感じたのは「気候危機委員会設立」という決議に至る議論でした。気候変動の進行に伴って、現在・将来の人類の生存に対する危機が現実となっているので、IUCNが先頭に立って取り組むため、気候危機委員会(Commission)設立をめぐって議論が行われました。
 気候変動による危機に対する取り組みの必要があることは認めつつも、「行動基盤としては?」「既存の特別委員会では?」式のさまざまな議論が進む中、バングラデッシュの女性が、「議論はもういらない。異常な洪水で村人や村が今にもなくなりそうだ。行動が必要だ」という意見を強く主張し、混乱の様相もありました。しかしこのような現場からの発言を無視せずに討議するIUCNの姿勢は肯定的に捉えるべきだと思いました。
 IUCNの決議は毎年取り組みを報告することになっており、すべての会員の取り組みにかかっています。

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「気候危機委員会設立」承認の投票結果
(政府会員「左:Category A」と、NGO・先住民会員「右:Category B+C」を別に集計)
IUCN WCC2020のウェブサイトより

ラムネットJニュースレターVol.45より転載)

2021年12月12日掲載