田んぼの生物・文化多様性2030年プロジェクト始動

ラムネットJ共同代表 金井 裕

 私たちラムサール・ネットワーク日本(ラムネットJ)は、2021年12月12日に小山市立中央公民館においてキックオフ集会を開催し、「田んぼの生物・文化多様性2030年プロジェクト」(略称:田んぼ2030プロジェクト)をスタートしました。このプロジェクトは、2010年に開催された生物多様性条約COP10で生物多様性保全の世界共通とされた愛知目標を田んぼで達成する「田んぼの生物多様性向上10年プロジェクト」が、愛知目標の達成年である2020年に区切りを迎えたことから、新たに計画したものです。
冊子「田んぼの生物・文化多様性2030プロジェクト」表紙

冊子「田んぼの生物・文化多様性2030プロジェクト」表紙

 「田んぼ2030プロジェクト」では、田んぼを取り巻く生きものたちは、稲作農業だけでなく地域の社会や文化も支えているということを明確にするとともに、愛知目標の後継となる生物多様性条約のポスト2020目標の実現への道筋を示すこととしました。ポスト2020目標は、この夏に開催予定の生物多様性条約COP15での採択に向けて、21の目標が検討中です。この21目標に対応した田んぼにおける生物多様性・生態系の保全・回復再生、消費者・都市市民との連携、政府・自治体による政策・支援制度の充実など22の水田目標2030(下表)を設定し、目標達成への行動内容も提案しています。詳しくは冊子「田んぼの生物・文化多様性2030年プロジェクト─水田目標2030」(https://tambo10.org/plan)をご覧ください。
 キックオフ集会では現地会場51名、オンライン27名の参加がありました。IUCN−Jの道家哲平氏から検討中のポスト2020目標と農業との関係について、国立環境研究所の西廣淳氏から気候変動や社会的な課題解決への田んぼの役割についての講演があり、そのあと参加者からの田んぼ2030プロジェクトへのメッセージをリレートークによりいただきました。集会の様子は田んぼ10年/2030プロジェクトのウェブサイト(【報告】田んぼの生物・文化多様性2030プロジェクトキックオフ集会 https://tambo10.org/archives/1319)からご覧いただけます。

現地会場参加者
田んぼ2030プロジェクト キックオフ集会(2021年12月12日、小山市)現地会場参加者


 田んぼ2030プロジェクトは、参加登録いただいた方々と一緒に進めるプロジェクトです。ポスト2020目標の決定後には、田んぼ2030プロジェクトの具体化のためのワークショップを開催し、秋に開催予定のラムサール条約COP14の機会に国内外に発信したいと考えています。
 田んぼを豊かな生物を育む湿地として未来につなげて行こうというのは、ラムネットJの設立の契機となったCOP10で採択された水田決議に基づく、ラムネットJの主要な活動のひとつです。田んぼ10年プロジェクトに登録いただいている方々には、継続していただくとともに、さらに多くの方々にご参加いただければと思います。

水田目標2030 一覧
水田目標 内  容
T.1 流域の生物多様性の向上
T.2 田んぼの生態系の回復・再生と、未来への継承
T.3 田んぼの生物多様性を育む農業システムの管理下への組み込み
T.4 田んぼの生きもの保全・回復
T.5 田んぼの生きものの遺伝的多様性の保全・回復
T.6 人と生きものとの共生
T.7 田んぼの外来生物への対策
T.8 稲作による汚染・環境負荷の低減
T.9 田んぼを通した気候変動対策
T.10 伝統的農法・水管理の再評価と田んぼの生きもの利用促進
T.11 田んぼによる災害被害の低減と回復
T.12 都市環境保全と田んぼとの連携
T.13 地域・風土に適応した品種の開発・保全
T.14 田んぼの生物多様性保全政策の実施
T.15 田んぼの生物多様性保全を推進する企業活動の発展
T.16 市民の価値観・行動の変革による生物多様性を育む農業の主流化
T.17 バイオテクノロジーによる悪影響への対処
T.18 生物多様性を育む農業に有害な補助金の削減・改善
T.19 生物多様性を育む農業支援の確保
T.20 生物多様性を育む農業への地域の伝統・知識・経験の活用
T.21 市民・NGOなどの政策・施策・事業など意思決定への参加の確保
T.22 国内外の組織・機関や団体との協働の推進

ラムネットJニュースレターVol.47より転載)

2022年05月01日掲載