中池見湿地における外来種防除の取り組みについて

NPO法人中池見ねっと代表理事 上野山雅子

 中池見湿地(福井県敦賀市)は4000種以上の生物が確認されている生物多様性の高い湿地です。しかし、この豊かな自然の中にも多くの外来生物が侵入、中には明らかに生態系の脅威となっているものもあり、その防除に苦慮しています。

アメリカザリガニの防除数


■アメリカザリガニ防除の10年
 当団体として設立当初から力を入れてきたのは雑食性で水辺の生態系に大きな脅威を与えるアメリカザリガニです。
 2011年に100個ほどのかご罠を使い2万4625匹を駆除。すると翌年以降、かご罠に入る数も目に見えて減り、密度を下げることができました。その成果は動植物の出現状況にも表れ、デンジソウはかつて「悪草」と呼ばれていた頃のように田んぼに繁茂し、水路にはヒメビシが出現、20年間生息を確認できなかったアオヤンマも姿を見せるようになりました。
 しかし、2020年に活動頻度が下がるとすぐにリバウンドしてしまいました。そこでこれまでの防除活動を見直し、かつてトチカガミなどの水草が繁茂していた水路を取り戻すことを目標に、本年「トチカガミプロジェクト」がスタートしました。
 プロジェクトは大きく二つ、ザリガニ防除に限らない湿地の保全活動を持続的に行っていく仕組み「サポーターズバンク」の立ち上げと、そのサポーターズバンクの中でザリガニ防除専門のチーム「ザリガニマジで獲る!チーム(通称ザリマジ)」を結成することです。ザリマジは毎週の防除作業と合わせて計測と考察を行い、中池見湿地でのザリガニ防除方法の確立を目指しています。

ヨシ1本ずつにザリガニが...
ヨシ1本ずつにザリガニが...
水路の草を抜くサポーターズとザリマジチーム
水路の草を抜くサポーターズとザリマジチーム

■アメリカザリガニのほかにも
・クサガメ 中池見湿地にはミシシッピアカミミガメはいませんが、クサガメとニホンイシガメとの交雑が確認されています。捕獲したクサガメや交雑個体は、通称カメハウスと呼ぶ隔離施設をビジターセンター前に設置し、その中で雌雄に分けて管理しています。子どもたちに人気のカメハウスは同時にカメの外来種問題について知らせる場となっています。
・ウシガエル(特定外来生物) ウシガエルは2018年に笹鼻池(約2ha)で侵入が確認され、2020年に音声トラップを使ってオスの成体1匹を捕獲、その後の調査で繁殖していないことが確認でき早期防除に成功しました。
・ヌートリア(特定外来生物) 今年3月ヌートリアのフンを発見、関係者間で情報共有したところ2021年10月に魚類調査用の定点カメラに写っていたことが確認され、すぐに市によって捕獲用罠が設置されました。
 その他植物でも、今年5月に特定外来生物のオオバナミズキンバイやナガエツルノゲイトウ、それぞれ1株を確認、県や市と情報共有しながら駆除に至っています。
 今のところこれら厄介な特定外来生物を初期段階で発見し対応していますが、これからも気を抜かず、フィールドを観る目を増やしながら湿地を守っていきたいと思っています。

ラムネットJニュースレターVol.48より転載)

2022年08月10日掲載