湿地巡り:屋久島永田浜(鹿児島県)

屋久島町観光まちづくり課 佐々航平

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 屋久島は、九州の最南端から60‌km南にある周囲約132km、面積約5万haの島です。屋久島永田浜は、屋久島北西部の「前浜」「いなか浜」および「四ツ瀬浜」の総称です。花崗(かこう)岩が風化した砂からなり、屋久島では数少ない砂浜の一つです。
 この浜には、毎年4月下旬から8月上旬にかけて多くのウミガメが産卵のために上陸し、7月上旬から9月下旬にかけて、ふ化した子ガメが海に帰っていきます。アカウミガメの上陸数においては、日本全体の約30~40%を占めており、北太平洋最大のアカウミガメの産卵地となっています。このため、ウミガメの保護上、非常に重要な場所として、2002年に霧島屋久国立公園に指定され、2005年にラムサール条約湿地に登録されています。

■永田浜(いなか浜)
永田浜(いなか浜)
海に戻っていくウミガメ
海に戻っていくウミガメ

 しかしながら、日本の砂浜に上陸しているアカウミガメは減少しており、近い将来絶滅の恐れがあるといわれています。その原因として、産卵前のウミガメはとても警戒心が強く、騒音や人工的な光を嫌うため、海辺に建設されたホテルや車のライトなどで砂浜が明るく照らされていると、上陸をやめてしまいます。さらに、浜に人影があったり騒いだりすると、産卵をやめてしまうこともあります。また、浜への見学者が増加したために、大勢の人に巣穴の上を踏み固められて、ふ化前の子ガメや脱出前の子ガメが、砂の中から出ることができずに死んでしまっているケースもあります。
保護ロープの設置作業

保護ロープの設置作業

 ウミガメの減少に歯止めをかけるべく、地元住民や関係機関が連携して、ウミガメの保護に力を入れています。一例として、道路からの光を遮光するために、松等の植林を行う活動、産卵巣が踏まれないように保護ロープを浜の上部に設置する活動、波打ち際や人の出入りが多い場所の卵を危険の少ない場所へ移植する活動、ウミガメの種類や甲長甲幅を計測し個体識別を行う調査活動など、さまざまな保護保全活動を実施しています。
 今年度永田浜において、ウミガメの観察会を再開する予定としています。屋久島へ来られた際には、ぜひ参加していただき、ウミガメを通して、環境保全活動の大切さを学んでほしいと思います。

2023年01月30日掲載