山口湾のラムサール条約登録をめざして

特定非営利活動法人野鳥やまぐち 原田量介

 山口湾は山口市の南部、瀬戸内に面した場所にある約1500haの小さな内湾です。満潮時の水深は平均で約4mと浅く、大小5本の河川が流れ込み、中でも山口県の中央部から流れ込む2級河川の椹野川河口周辺には、約350haの干潟が広がり、多くの希少生物が生息することから、日本の重要湿地500にも選定されています。
 山口湾をラムサール条約湿地に求められる国際的な基準で見ると、基準2においては、チュウヒ、カブトガニ、ベッコウトンボ。基準6を満たすものとしては、クロツラヘラサギ、ズグロカモメ、チュウシャクシギ、カンムリカイツブリ。中でもクロツラヘラサギは毎年35羽前後が飛来し、個体群の越冬地としては日本での北限です。

山口湾上部
山口湾上部
山口湾下部
山口湾下部

 条約の基盤となる3つの柱のうち、保全・再生では、椹野川河口域・干潟自然再生協議会が主体となり、産・学・官・民が一体となって干潟・藻場の再生が行われており、NPO野鳥やまぐち他共催団体、企業の協力により、クロツラヘラサギを守るための海岸清掃活動も毎年行っています。
 ワイズユースにおいては、関係漁業組合との協働で、アサリの復活など豊かな漁場の回復を目指しています。
 交流・学習では、山口県立きらら浜自然観察公園が隣接しており、山口湾の自然を生かした環境学習、自然とのふれあい、交流の拠点となっています。
 山口湾は特定猟具使用禁止区域になっていましたが、ラムサール条約登録をめざし、2021年3月、鳥獣保護区指定への要望書を山口市長へ提出し、今後の活動についても理解と協力を得ることができました。9月には地元利害関係者への説明会が行われ、その後、指定案の縦覧、10月には県環境保全審議会鳥獣保護部会での審議を経て、2022年11月より706㏊が山口湾鳥獣保護区として指定されました。
クロツラヘラサギを守るための海岸清掃(2021年11年20日)

クロツラヘラサギを守るための海岸清掃(2021年11年20日)

 今後は特別鳥獣保護区への計画変更申請を行い、その後、国指定の鳥獣保護区にできれば、やっとラムサール条約湿地へのエントリーができます。皆さまのご理解とご協力をよろしくお願い致します。
ラムネットJニュースレターVol.51より転載)

2023年05月02日掲載