イベント情報

■愛知県

アジアの浅瀬と干潟を守る会

山川里海健康診断

●日 時:2017年5月~11月
●場 所:愛知県豊橋市、新城市、設楽町
●問い合わせ:TEL 090-3306-1286
https://wildmikawa-wan.amebaownd.com/
※限定イベント:グループ内のイベントのため一般からの参加者の募集はありません。

 里海(生物多様性と生物生産性が高いレベルで保たれている海域)としての再生事業を全県体制で行ってきた三河湾。今度は、まるごとラムサール条約への登録を目指すことになりました。生態系サービスとも呼ばれる、貝類を中心に20種を超える漁獲高ダントツ日本一の水産物は、全国の食卓で味わうことができます。
 ツイッターで#三河湾フェス、#三河湾まるごとラムサールのハシュタグ付けてつぶやいて頂ければ嬉しいです。
 学校の総合の授業として行いますので、開催は平日の昼です。



【団体・湿地紹介】
●はじめに
「100年続けるぞ!」と、平成26年(2014年)から始めた山川里海健康診断。小学4年生を対象とした野外環境学習であり、世代を二つ三つまたぐ抱腹絶倒、空前絶後の長期モニタリング手法の実践である。
 目新しいところは2つ。1つは、小学校の総合学習枠で学校行事として、平日の白昼に1学年全員を野外学習に参加をさせてしまうこと。昨年からは、保護者も受け入れ、10名から20名の参加があった。
 もう1つは、以下に示した長く続けるための仕組みである。学校区の自治会を核に、元気なリタイヤ世代を中心として結成した見守り組織「ハマレンジャー・カワレンジャー」である。担任の先生を始め、学校関係者の負担を極力軽減し、野外での児童生徒の活動をより安全にするための社会福祉制度である。
 同時に、リタイヤ世代にとっては、孫世代と一緒に学べる生涯学習機会の創出であり、「生きがい」を感じて続けて頂いている。 今年は83名、来年度に向けて500名を目標に増員中である。

●成果 海の健康診断
 1、2年目は前芝海岸のみの健診で、活きたクルマエビや、愛知県では絶滅危惧・A類にリストアップされていたハマグリ(Meretrix Lusoria)が40年ぶりに発見されるなど、児童も見守るリタイヤ世帯も、ワクワクを共有する発見が数多くあった。
 加えて、前芝小学校は徒歩で干潟まで行ける数少ない小学校で、各学年1クラスと少人数なので、初年度から3年生も4年生と一緒に野外学習を行っている。
 ただし、3年生は文部科学省の学習指導要領に沿った、干潟を歩き回って生き物を捕まえてくる「生き物とのふれあい」を行ってもらっている。
 見守る人は毎回ヘトヘトになるが、この体験を経ている4年生は、手際良く落ち着いて調査ができ、事後のフォローアップ授業でも、核心を突く鋭い質問を私たちに投げかけてくれる。
 3年目になる今年は、前芝海岸の対岸の吉前海岸(よしざきかいがん)でも、3校が健診を行うことができた。
 豊橋市立の牟呂小学校4年生122名、汐田小学校4年生60名、津田小学校4年生38名と保護者で約250名の参加者を受け入れることができた。

●課題 海の健康診断
 今後、海の健康診断への参加校が増えると、以下の2つの設備が必要となる。
1. 緩やかで広い海岸堤防の階段 常設トイレ
 トイレは、総合体育館とリゾートホテルのものを借用させて頂いている。
2. 活動センター
 ひな型としては[藤前干潟活動センター]や[桑名市はまぐりプラザ]
 ライフジャケットなど野外活動で必要な機材や用具の収納、AED、津波避難場所機能、漁労を始めとする伝統食文化などの歴史・民俗資料の展示と、そのレプリカの貸出など、防災、環境、教育、福祉、地域コミュニティーの拠点が欲しい。
 現状拠点はなく、ライフジャケットが500着必要になる来年度は、前芝の倉庫が許容量を超え、輸送はバンから2トン車のロングボディーにスケールアップせねばならない。第17回東京湾シンポジウムの発表の中に、里海の定量評価に「教育」という項目を見つけた。
 干潟を含む浅海域を「学校教材」、或いは「生涯学習教材」と位置付け、安全に学習が行えるように行政の皆様方に整備をお願いしたい。

●成果 川の健康診断
 昨年から始めた川の健康診断は、汽水域で1校、淡水域で1校続けてもらっている。
 汽水域では、ヤマトシジミを指標に健診を行い、高い生物生産性と浄化能、上流に風化花崗岩の地質があるために、下流に良質な石英砂が運ばれ、“べっこうしじみ”が育つメカニズムを体感してもらえている。
昨年、今年も生息密度は高いものの、平均1グラムに満たない小さな個体が多く、“乱獲”という漁獲圧の強さが感じられる結果となった。
 淡水域では、川の漁協の協力でウナギを指標とした健康診断を続けている。初年度の捕獲率は59%、次年度は57%だった。
大規模な葦原湿地の整備や、中流域の砂礫を使い河口に「施工干潟」造成するなどしたお陰で、野生ウナギの数自体は増えているが、乱獲も影響しているのか各個体は小さかった。

●課題 川の健康診断
 三河港の開発時に河口域の漁業権をはく奪したまま放置されているため、資源の管理者がおらず、密漁状態が黙認されている。
 これは、ヤマトシジミも同じで、青潮による斃死が無くなり、資源量が安定的に増えているのに、カクワにプラスチックネットをかぶせて、根こそぎ捕って、稚貝として宍道湖などへ転売される“植民地状態”を許している。
 また、中流域に土砂が堆積すること、それをダンプカーで運ばなければならないことは、川の病である。設楽ダムを造り新たな利水を考えるのではなく、農業用水など余っているものは豊川本流に返し、「土砂を六条潟まで流せる元気」を、取り戻して欲しい。

●成果 山の健康診断
 昨年から愛知県新城市、設楽町、東栄町で予備調査を行って、今年の8月に4学校区で、以下のようなおぼろげなモデルを考え、植生調査と昆虫採集を行った。

「山」河畔林等の植生+昆虫
   古代の浅海域由来のミネラル
    ↓ ↑
「川」渓流魚   
降下回遊魚ウナギ・アユ
   ヤマトシジミ
    ↓ ↑
「里」ひとの暮らし、産業活動
流通消費・排泄
    ↓ ↑
「海」アサリ・その他もろもろ

 昼でも採取可能で、クヌギやヤナギ(河畔林)に集まるミヤマクワガタを指標の一つと決め採取を試みた。お盆過ぎに実施したためか、設楽町立名倉小学校の裏山で1匹しか採取できず。

●課題 山の健康診断
 少子高齢化によって、現地でのカウンターパートナーが見つからず、豊橋市や名古屋市から人材を調達しているのが現状である。設楽町立の小学校の児童数を以下に示したが、複式学級を採用している学校もあり、設楽ダム受け入れが児童数減少に拍車をかけている可能性もある。
学校名 全校
田口小学校 47
清嶺小学校 20
田峯小学校 11
名倉小学校 45
津具小学校 39
合計 162
 森林資源をダム湖に水没させるのではなく、産業資本としてとことん活用する方向へと政策転換できないと、街もダム湖の底へ沈んでいくことに。

●成果 里の健康診断
 今年から始めた里の健康診断。川と海の健康診断に参加した学校で、指標に用いた生物の置かれている現状や、水産生物として一般社会の中でどのように流通して、消費されているのかを、「食べて学べる」室内授業を行った。
 ヤマトシジミを用いて川の健康診断を行った下地小学校では、豊川のヤマトシジミの生息域には漁業権がなく、密猟が黙認されていること。保護者の皆さんにも喜ばれた、旨味成分が4倍に増える前処理の方法を伝授。
 広く流通し始めたのは1970年頃からで、河口堰やダムの建設で汽水域が減り、ヤマトシジミも減っていること。今国内で一番多く流通しているのはロシア産であることなどを伝え、今後どうしていったら良いのか児童に問いかけた。
 海の健康診断を行ってくれた前芝小学校では、豊川河口で獲ったハゼの甘露煮を愛でながら、豊橋の伝統食品産業の佃煮産業の成立と集産について説明し、産業資本である身近な自然の大切さを噛みしめてもらった。
 牟呂小学校では、復刻した三河湾のアサリの佃煮を愛でながら、アサリの話題でとことん議論した。
 漁獲高を、1983年の最盛期と比較すると2015年はわずか8.75%にまで落ち込んでしまったことを説明し、理由を考えてもらった。現在そして未来に向けての六条潟の果たす役割、山川里海健康診断の果たす役割なども児童から沢山提案があった。

●さいごに
 もともと、愛知教育大学の環境教育分野の専門家や、名古屋大学の小児精神医学の専門家を交えて決めた対象年齢10歳ではあるが、事前の説明と調べ学習、比較的自由度の高い野外での体感学習を経ると、大学生とほぼ同じか、それ以上の鋭い質問が帰って来ることが分かった。
このような原体験をした児童も10年経つと20歳で、地域社会を支える構成員になる。1万人に1人くらいは研究者になったり、積み重ねられることで、社会全体が変わったりるすかもしれない。結論:豊川・三河湾は優秀な学校教材であり、「小4、侮ることなかれ」、である。