福岡市の人工島の野鳥公園は、「公共事業の見直し」と「湿地の再生」です

ウエットランドフォーラム 松本 悟

 福岡市の人工島(アイランドシティ)の野鳥公園について、現在、市民参加のワークショップが進行中なので、その経緯や現況等を紹介させていただきます。
 1994年着工の人工島埋め立て事業は、「環境破壊」と「財政破壊」の2点で強く市民から批判を受けてきました。2004年の終了予定でしたが、現在も工事中で、収支計画や全体計画も5度の大きな変更を強いられてきました。
 野鳥公園は2009年の見直しで、8.3haから12haに拡大されました。
 ウエットランドフォーラムは台湾や韓国の友人・組織に働きかけ、多くの声を集めて市議会に湿地の保全の請願を提出しましたが、結果は議論されずに廃案でした。しかしそのことが、米国のクロツラヘラサギの保護グループ「SAVE International」を動かし、2010年に福岡大学のまちづくり研究室と共同でシンポジウムを開催し、2011年には福岡市に具体的な野鳥公園の提案を行いました。それらを受けて、福岡市は担当部局を、港湾局から環境局に移し、野鳥公園のあり方を検討する市民参加のワークショップ(ラウンジカフェ形式:RC)を2012年10月から開始しました。
 これまで5回のRCが開催されました。しかしまったく議論が深まらず、まだ何もイメージや方向性は見えていません。我々は事務局へ、情報(他の野鳥公園の事例、周辺の野鳥の飛来状況、この地域の環境特性、国設鳥獣保護区のこと、エコパークゾーン計画など)の共有、さらにSave Internationalや福岡大学研究室のプランなどの公開を執拗に求めてきましたが、一切応えず、不毛な時間を費やしています。
 福岡市の事務局は「市民の声で作ります」ということを強調していましたが、5回目のRCで専門家委員会を立ち上げることをいきなり発表しました。3回目のゾーニングがうまくいかなかったり、4回目のテーマが、事前、直前、当日、すべて違ったり、4回目で示された事務局の図面がパクリ(これまでの参加者の意見をまとめた図だと説明されたが、2006年に専門家委員会が作った基本構想図の描き写しだった)であったりと......事務局が混乱して、専門家に委ねたということではないかと思っています。

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4回目で示されたプラン図(2006年検討委員会案のパクリ)に参加者が書き込みをしました
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野鳥公園現地見学の様子

 当面、専門家委員会がどのようなメンバーで、どのような役割なのか、RCとの関係はどうなるのかなどを注視して、今後の動きを考えなければなりません。ラムネットJの皆さまからも「野鳥公園のあり方」について多くの意見を寄せて欲しいと思います。「福岡市 野鳥公園 ラウンジカフェ」で検索すれば、これまでの様子を見ることができます。
 ラムサール条約の「湿地再生の原則」とはほど遠いですが、今、野鳥のための場所が狭いながらも作られようとしています。人工島の野鳥公園は、「公共事業の見直し」であり、「湿地の再生」です。ぜひ、皆様の知見をお寄せください。

ラムネットJニュースレターVol.13より転載)

2013年10月12日掲載