湿地巡り:行徳鳥獣保護区(千葉県)

行徳野鳥観察舎友の会 野長瀬雅樹

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 行徳鳥獣保護区は東京湾の奥、千葉県市川市の市街地にある55haの人工湿地帯です。かつてこの地域は浅瀬や干潟が広がり、水鳥が多く飛来する場所でした。高度経済成長期に東京湾岸の埋め立てが進む中、「野鳥のすみかを守ろう」と自然保護運動が起き、結果として埋立地に造成されたのがこの保護区です。隣接する宮内庁新浜鴨場と併せて約83haの行徳近郊緑地特別保全地区として、「生きものの暮らしを最優先、人の利用は最小限」を理念に東京湾岸の原風景再現を目指しています。
 当初は草もまばらな荒地だった保護区には池や棚田が造成され、生活排水を水源とする淡水湿地を形成しています。栄養豊富な生活排水は、湿地を流れる間に多くの植物・生物を育て、やがてそれらが水鳥の餌となります。池を通った水は最終的に保護区の海面に注ぎ、淡水から汽水、海水へとつながる環境を作り出しています。水辺環境の創出・水の浄化・水鳥誘致の一石三鳥を目指しているわけです。東日本大震災では液状化や地割れ、干潟の一部消失などの影響がありましたが、復旧工事も進み、生物たちも徐々に新たな環境に定着しているようです。

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行徳鳥獣保護区
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干潟生物観察会

 1975年の造成以来ここで記録された野鳥は252種。年間約120種が観察されています。
 保護区の一画には関東有数のカワウコロニーを抱え、冬には多くのカモやカモメ、タカ類が現れます。海面部は水門で東京湾とつながっていて、ボラやスズキ、ハゼ、ウナギなどが入り、干潮時に現れる泥質干潟にはトビハゼやヤマトオサガニが生息しています。
 行徳野鳥観察舎友の会は、保護区に面する野鳥観察舎の利用者が中心となり、1979年に結成されました。現在は認定NPOとして、野鳥観察舎や野鳥病院、行徳鳥獣保護区の管理運営(市川市より受託)に当たる他、野鳥調査や自然観察会等を開催しています。都市部の貴重な自然環境として、地域の宝として保護区を守り育てていきたいです。
ラムネットJニュースレターVol.14より転載)

2013年12月08日掲載